松山家庭裁判所 昭和39年(家)501号 審判 1967年4月19日
申立人 中野多市(仮名)
被相続人 下田ハマ(仮名)
主文
(1) 標記事件につき、当裁判所が昭和三九年一二月一五日付でなした、「被相続人亡下田ハマの相続財産管理人に住所松山市○○町二丁目五五番の二小川保を選任する。」との審判は、これを取消す。
(2) 本件申立を却下する。
理由
主文第(1)項掲記の審判は、被相続人下田ハマの相続が開始したことを前提として、なされたものであるが、本件記録編綴の同人の除籍謄本には、その、身分事項欄に、「年月日時および場所不詳死亡昭和二七年一一月六日附許可を得て同月一〇日除籍」なる旨の記載があり、その記載は、当庁昭和四一年(家)第七八九号相続財産の処分申立事件に編綴の松山地方法務局長の当裁判所宛照会回答書によれば、被相続人下田ハマの戸籍消除事由は、大正五年二月三日民事第一、八三六号司法省法務局長回答、昭和六年二月一二日民事第一、三七〇号司法省民事局長回答、昭和二四年九月一七日民事甲第二、〇九五号法務省民事局長回答等の先例に、いわゆる高齢者職権消除に基づくものであることが認められる。
しかし、上記行政通達を根拠として、被相続人下田ハマの戸籍に死亡の記載がなされても、それは単に戸籍行政上の便宜にもとづくものであつて、失踪宣告の如き法的効果を生ずるものでないことは、いうまでもない。
したがつて、被相続人下田ハマの死亡の事実または失踪宣告の審判のなされたことについて、何等の資料がない本件においては、同人の死亡による相続を前提として相続財産管理人の選任をすることはできないものといわなければならない。
よつて、家事審判法第七条、非訟事件手続法第一九条第一項を適用して、相続財産管理人選任の審判を取り消したうえ、その申立を却下することとし、主文のとおり審判する。
(家事審判官 糟谷忠男)